D5600 + Tamron SP 90mm f/2.8
香港の「逃亡犯条例」の改正案に対し、大規模なデモが香港の中心部で発生。
香港でデモは割と発生するが、通常は穏やかなアピールに過ぎないのだが、今回だけは異なって暴力的なことも行われてしまった。
それほどまでにこの問題は大きな懸念が香港の人たちに広がっているのだろう。
改正案の内容は、香港が犯罪人引き渡し協定の対象国を広げるもの。
そしてその対象国に中国が入ることが問題となる。
そもそもこの法改正案のきっかけは、昨年2月に香港人男性が台湾にて女性を殺害、香港に逮捕されないまま帰ってきており、香港が対象国でない台湾に引き渡しができなかったことからのようだ。
そういう意味では香港政府の案は筋が通っている。
何度も書くが、問題はこれまでの対象でなかった「中国が対象」となること。
それは、いわれのない容疑により本土へ引き渡しがなされてしまう可能性が出てくることだ。
香港政府は引き渡し対象の犯罪を限定するようだが、そんなものはあまり効力があると思えない。
中国側が該当する犯罪としてねじ込んでくれば、香港側はどうしようもないと思われるからだ。
「いわれのない容疑」を早々簡単に中国がかけてくるとはあまり思えないが、反政府的な言動などへの弾圧が予測され、次第次第に香港の事実上の中国化が進んでいくのではないだろうか。
日本人からみると、香港の人たちも中国語を話す中国人。
中国への返還もとっくになされているのだから何をいまさら、な感じがあるが、過去に長らく香港に住んでいたことのある俺からすると、「香港人」と「中国人」はまるで違うと断言できる。
たしかに人種としては中国人だし、中国語のひとつである「広東語」が母国語。
香港人の中には中国本土からの移民もいるからさらにややこしいのではあるが、決定的な差は「意識」「風土」「経済レベル」だと思う。
香港の人は高度に自治された国際経済都市の一員であるという意識がある。そしてそれを実現する風土と経済力も持っている。
なによりいまでも中国本土で横行する犯罪まがいの「偽物」「パクリ」などというものからはとっくに卒業している。
ずいぶん以前となるが、2003年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)が良い例だと思う。
あの問題をきっかけに、香港は本当に清潔な都市に生まれ変わった。
衛生観念が劇的に向上、それ以前の香港を知る人からすれば現在の状況は驚くべきことになっているはずだ。
しかし、中国本土はどうだ。
SARSが広東省で発生し、上海や北京などはあまり関係がなかったこともあるのか、当の広東省でも衛生のレベルが上がったとはとても思えない。
香港と接するシンセンなどでは近未来的な立派な建物、整備された道路を見かけるが、一歩裏に入れば以前とそう変わりはない。
のど元過ぎれば、の世界であり「自分さえよければそれでいい」風潮はまだまだ根強いと感じる。
この法改正が仮に実施されるということは、一国二制度がイギリスから中国へ返還された1997年7月より50年間保証されているにもかかわらず、形骸化する可能性がたかくなるということなのではないか。
中国の支配が少しづつ忍び寄ってきていることに他ならない。
このまま香港は中国に飲み込まれてしまうのか、その前に大規模な移民や社会的アクションが起きるのか。
非常に注目すべき問題だと思う。